曖昧であることを否定しない

はあちゅうさんの短編小説、「通りすがりのあなた」。
はあちゅうさんにとって初めての文芸作品だそうです。
短編集になっており、作品全てが友達、家族、恋人など、
明確な名前が付けられない人間関係を描いたものになっています。

曖昧なものを、曖昧なまま残しておくのもいい、
そんな人間関係があってもいい。

曖昧さを否定しないメッセージがとても心地よく感じました。

私は赤塚不二夫さんの「これで、いいのだ」という言葉が好きです。
好きになったきっかけは、タレントのタモリさんが
赤塚さんの葬儀で読み上げた弔辞でした。
一言一句正確ではないと思いますが、

「・・・全ての出来事、存在をあるがままに、前向きに肯定し受け入れること。
それによって時間は前後関係を断ち放たれてその時その場が異様に明るく感じ
られる。すなわち、これでいいのだ、と。」

諦めるのではない、目の前の存在をただそうだと理解し受け入れる。
なんてシックな考え方だろうと思い、以来好きになりました。

「通りすがりのあなた」を読み終わった時、曖昧な人間関係を否定しない、人の
数だけ人間関係があっていいというメッセージに、同じような感情を持ちました。

とてもシックだと思いました。

はあちゅうさんは、エンドロールで「誰かのルールに当てはまらない人間関係が
あっていいし、それをお互いに許容する社会であればいい。」と書かれています。

私も自分自身の経験から、それなりの時間を生きていれば誰しも説明し難い人間
関係を一つや二つ持っていて不思議ではないと考えています。

こういう考えを口にし難いご時世だと思っているので、表だって言うことはして
いないのですが、そんな想いを持つ中で出会えた小説でした。

移動中の電車で読もうと思って出かけたものの、読み始めたら止まらなくなり、結局喫茶店に立ち寄って一気に読み終えました。


通りすがりのあなた

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