時々、少し背伸びした場所に出かけたいと思うことがあります。
訪れるとちょっと緊張する場所。
いつもより気の利いた服で出かけたい場所。
毎週のように行くことはできないけれど、少し奮発して食事を頂く場所。
何か特定の理由がある訳ではないのですが、こうした場所へ足を運びたくなるのは
忙しかった仕事がひと段落して、ふと気づくと週末が空いている、そんな時が多い
ので、息抜きと自分への労いという意味合いが強いのかな、と思っています。
価値ある場所や敷居の高い場所は人それぞれだと思うのですが、私にとって
その一つが、東京銀座にあるHenriCharpentier(アンリ・シャルパンティエ)
のカフェです。
大型百貨店などにお店を多く出店し、フィナンシェなどの焼き菓子販売で有名な
アンリ・シャルパンティエですが、芦屋・銀座・西宮の3ヶ所にデザートと
ドリンクを頂けるカフェを展開しています。
3ヶ所全てのカフェで共通して提供しているメニューが「クレープ・シュゼット」。
アンリ・シャルパンティエのシンボルとも言われるデザートです。
クレープ・シュゼットとは、薄く焼いたクレープ生地をバターとオレンジ果汁で
軽く煮てリキュールでフランベして仕上げる温かいデザートです。
以前、東京都内にあるホテルのレストランで期間限定メニューとして提供されて
いたクレープ・シュゼットを初めて食べて、それがあまりにも美味しかったため、
何処かで食べられる場所はないかと探して見つけたのがこのカフェでした。
ですので、オーダーするのは決まってクレープ・シュゼットです。
一緒にダージリンの紅茶も頂きます。ドリンクとのセット価格で2,500円なので、
私の懐事情では毎日気軽に利用するというわけにはいきません。
だから、私にとってこのお店は少し「背伸びをして行くところ」なのです。
銀座のカフェはテーブル席が3つ、カウンター席が8席と決して大きなお店では
ありません。休日になると、特に午後の時間帯はずっと満席状態です。
私も利用するのは仕事が休みとなる土日になってしまうので、行くときは午前
11時くらいに到着できるようにしています。この時間帯は休日でもかなり空いて
いて、気兼ねなく利用することができます。
1人で利用することがほとんどなので、いつもカウンター席に通されるのですが、
私にとってこのお店の魅力の一つがカウンターの広さです。奥行きがたっぷり
とられているので、カウンターに立つ店員さんとの距離も気になりませんし、
本などを広げていても苦になりません。内装が無機質なのも私にとっては魅力
的です。少し寒々しい感じがするかもしれませんが、余計なものが目に入らず、
決して広いとは言えない空間でも、とても落ち着いて過ごすことができます。
オーダー後の待ち時間は本を読んで過ごすことが多いです。店員さんが話かけて
くれることもあるので、たわいない話で盛り上がったりもします。
このカフェでは、クレープ・シュゼットの仕上げを目の前で店員さんが実演して
くれるのもウリの一つになっているそうです。青い炎を上げてフランベされた
温かいクレープ・シュゼットは、なめらかな食感と最後に少し残る苦味が何とも
言えずクセになります。
個人的には、ストレートの紅茶ととても相性がいいと思っています。
美味しいクレープ・シュゼットを満喫したら、食休みを兼ね紅茶を飲みつつ本を
読んで過ごします。お昼を過ぎるとお客さんが増えてくるので、滞在時間は1時間
ほど。長くても1時間半で席を立ちます。
1日24時間ある中のたった1時間程度ですが、普段気軽に味わうことはできない
贅沢な時間を持つことで、何だか気分が清々しくなります。
カフェを出た後、銀座の通りを歩く自分の背筋は、いつもよりピンと伸びている
ような気がします。
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