パラレルキャリア

以前、本業以外の複数の活動に携わる自分を説明するとき、
「スラッシャー」という言葉を好んで使っていることを紹介しましたが、
本業以外の活動を始めるきっかけとなったのがこの本でした。


時間と場所を選ばない パラレルキャリアを始めよう!―――「2枚目の名刺」があなたの可能性を広げる

初めてこの本を手にとった時はまだ比較的新しい概念だったパラレルキャリアも、
この数年で一気に広まり、より多くの人が知るようになった印象があります。

この本でも紹介されていて、私自身も実感しているパラレルキャリアの主な利点を
以下の3点にまとめてみました。

その1「本業以外で身につけた視点が本業をより輝かせる」

私が実践しているキャリアの一つに、中間支援団体へ登録しての活動があります。
中間支援団体は、一言で表すと橋渡し役です。
社会課題を解決しようとしている団体やNPOと、
自分の能力を使って団体を支援したいと思っている社会人を繋ぐ役目を担っています。

中間支援団体は、登録された個人がどのようなスキルを持っているかを把握します。
課題を解決したいNPOや団体に対しては、活動意義やその目的を確認した上で、
スキルを持った社会人とプロジェクトを組むことで
大きな価値を発揮できると判断した場合、
登録されている個人からメンバーを選抜し、団体の課題解決に取り組むための
プロジェクトチームを立ち上げ、一定期間団体やNPOを支援します。

中間支援団体としては「二枚目の名刺」や「サービスグラント」が有名です。
私はサービスグラントに登録をしており、
今までに3つのプロジェクトに参加しました。

プロジェクトには、全く異なるバックグラウンドを持つメンバーが集まります。
自分が所属する組織には存在しない考えや思考に触れ合うことができますし、
運良くプロジェクトにイノベーション思考やデザイン思考に優れたメンバーがいれば、
その考えを無料で学びとることができます。

プログラミングに強いメンバーがいれば、その基礎を教えてもらうこともできます。

そしてこれらの経験は全て自分の血肉となりますし、
本業に持ち帰って別の形で活きてきます。

私の場合、課題を持つ団体を支援しながら、
結果として自分がたくさんの勉強をさせてもらうことになりました。

その2「視点の広がりで曖昧さを許容できるようになる」

便利すぎる社会になったことで、サービスや製品に求められる要望が
どんどん多様化しています。
多様な要望に応えるサービスや製品を作り出すためには、
多様な価値観を経験し、受け入れることが重要だとされています。

これは「既存の組織で当然とされていた価値観とは別の価値観が存在する」
という不確実性や曖昧さを受け入れなければならないことを意味します。

自分が所属する会社や組織からの越境を経験すると、
最初は自分の組織にないコミュニティの価値観に戸惑います。
ただ、時間の経過とともに価値観に違いがあることそのものを
自然と受け入れられるようになります。
まさに私がそうでした。

サービスグラントでのプロジェクトでメンバーと話し合いをしていると
「え、本気で言ってる?」と思う瞬間がいくつもあります。
最初は戸惑いましたが、だんだんとそれが心地よくなってきました。

色々な考えに触れること自体を楽しめるようになってきたのだと思います。
今では、プロジェクトでさほどの意見もなくすんなりと
方向性が決まってしまうと、若干不安になるほどです。

その3「実は誰でも気軽に始められる」
本業以外の活動が、給与という対価を得るものでなければならないわけでは
ありません。
もちろん、より多くの給与を得るために本業以外の活動をするのも一つの方法です。
活動の目的は人によって大きく違って当然です。

私が登録しているサービスグラントのプロジェクトに参加しても、
別に給与はもらえません。
ただ、専門知識を持った社会人だけしか参加できないものでもありません。

自分が今まで培ってきた経験や置かれた立場だからこその発想や、
独自の視点で貢献できることは必ずあります。

興味はあるけど、自分にできることが見当たらないと思っている方は、
まず第一歩を踏み出すという意味で、自分に合いそうな中間支援団体に
登録してみることをお勧めします。

もともとは、自分へのコンプレックスと劣等感がきっかけで知った
パラレルキャリアという考え方。

朝から晩まで働いて、置かれている場所ではそれなりに
結果を出せている自負はあったものの、
あまりに狭い範囲のことしか知らない自分がだんだんと心配になってきました。

もう少し、自分を色々な環境に置いてあげたい。

ちょっと客観的な目線でそんな風に思い始め、
偶然手に取った本でパラレルキャリアという考え方に辿り着き、
プロボノという活動から私は一歩を踏み出しました。

見た目は何の変化もありませんし、朝から晩まで働く環境にも
現時点で変わりはありませんが、
本業以外で出会った人たちの考えに触れ、知らなかったことを知り、
使えるツールも格段に増えました。

数年前の自分と比べて、色々な意味で少し自由になった自分がいます。

活動や思考の範囲が広がるだけで、人はちょっとだけ息苦しさから解放される、
そんな気がしています。

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