もし、思い出すのなら

タイトルと表紙に惹かれて購入した夏生さえりさんのエッセイ。

口説き文句は決めている。。。

ちょっとかっこいい、なんて思いながら書店で手に取りました。
「食と恋」をテーマにしたエッセイ集になっています。

最も好きになったのは「元恋人を匂わせる飲み物」。

大事な恋人に、自分の好きな飲み物を覚えてもらうことで、
自分がいないところでも思い出してもらえるといい、
果ては自分のいない季節、いなくなった後もその飲み物を起点に
自分を思い出してほしい、そんな少し面倒でややこしい、
表現し難い想いが、すごく爽やかなかたちで描かれています。

自分がいなくなった後も、その飲み物を飲んだら必ず思い出させる、
一見するとなんか小悪魔のような発想に感じなくもないですが、
私はある種の潔さを感じました。

「食と恋」というテーマからは少し外れますが、昔の恋人には、
一緒に出掛けた場所とか一緒に観た映画とか、そんな記憶は削ぎ落されて、
たった一つの印象だけが残されているくらいのほうがいい、
相手を思い出すための鍵は一つだけ、
それがない限り思い出すことはない。
このエッセイを読んで、過去特別だった人に対して
良い意味でそれくらい潔くありたいと思いました。

自分との思い出をいたるところに残して、未来で事ある毎に
自分を思い出してもらうよりも、たった一つの方法だけが
自分を思い出す鍵になる。
このエッセイではそれが飲み物であり、嗅覚とか触覚といった
五感によって一時的に呼び戻され、次の瞬間には再び記憶の奥にしまわれて
日常に戻っていく。。。

たとえ短い時間でも特別な存在であったからこそ、
相手の姿を思い出す方法は一つだけで構わない、
その一つだけを記憶の隅にしまって未来を歩いていく、
私はそんな風でありたいです。

このエッセイのように、もし飲み物で元恋人に自分を思い出してもらうと
したら何だろうと妄想してみました。

私はいい歳してコーヒーが飲めません。友人からはブラックコーヒーを
がぶ飲みしていそうなビジュアルと言われるのですが。
また、冷たいものを飲むとすぐにおなかを壊してしまうので、
真夏でも温かいものを飲みます。
そのくせスターバックスが好きで頻繁に利用します。
私がスターバックスで飲み物を購入すると、
必然的に温かい紅茶になってしまうので、
必ずカップと蓋の隙間からティーバッグのタグがぶら下がっています。

元恋人には、真夏にティーバッグのタグがぶら下がった
スターバックスのカップを持つ高身長で黒髪の女の人を見かけたとき、
私を思い出してもらえたら嬉しいなと思います。

それ以外では、何一つ思い出せないくらいでいいとさえ思います。

ちなみに私がスターバックスで購入するのは、
季節を問わずほうじ茶ティーラテです。

口説き文句は決めている

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